【効果検証】パーキンソン病の運動療法にヨガが良い?
本記事では、パーキンソン病患者様に対するヨガの効果について、私見も交えてご紹介しております。
こんにちは、ヒロです。
今日はヨガのテーマです。
今までブログで紹介しておりますが、ヨガは身体に対して様々な有益な効果をもたらしてくれる可能性を持っています。
そのため、近年では医療においても運動療法の一つとして注目されています。
その中で、難病であるパーキンソン病に対するヨガの効果について今日はご紹介いたします。
当事者の方や家族の方以外は中々馴染みがないかもしれませんが、興味のある方やインストラクターの方に今日の情報が届けば幸いです。
目次
パーキンソン病とは?
はじめにパーキンソン病について整理しておきましょう。
※このブログは、どちらかというと医療職以外の人に向けて発信しているため平易な表現といたします。
パーキンソン病とは、脳にある黒質という部分の変性によりドーパミン神経細胞が減り、体に様々な障害を引き起こす進行性の病気です。
具体的な症状としては、手の震え(振戦)、動き出す際にうまく足が出ない(すくみ足)、筋肉の強張りが強くなる(固縮)、動こうと思っても動けない(無動)、バランスが取れなくなる(姿勢反射障害)などが特徴的で、症状の進行具合により他にも様々な症状を引き起こします。
このような特徴のため、歩くのが不安定になる、転倒しやすくなる、関節が動かしにくくなるなど日常生活に大きな影響を及ぼします。
難病情報センターによりますと、10万人に100人~150人くらい(1000人に1人~1.5人)の有病率で、60歳以上では100人に約1人(10万人に1000人)となるようです1)。
この数字を見ると比較的多い病気かなと感じます。
完治のための治療法は確立されていないため、基本的には服薬で症状をコントロールし、運動療法で身体の機能を維持することが大変重要となります。
今日のテーマとは関係ない話にはなりますが、パーキンソン病は薬の効いている時間と効いていない時間で動き方が大きく異なるウェアリングオフという現象が見られます。そのため、薬の効いている時間帯は一見普通の動きに見えますが、薬が切れた途端全く動けなくなるという人も多い病気です。
パーキンソン病に対するヨガの効果
それではヨガの効果についてみていきましょう。
Kwok, Jojo YY,らは、パーキンソン病の重症度分類であるヤール分類で1〜3の軽度から中等度の症状であるパーキンソン病患者さんに対して、8週間のヨガを実施した群と従来のストレッチや筋トレをした群の比較をした結果、不安症状や抑うつの度合い、QOLについてはヨガをした群の方が効果があり、運動機能や歩行能力などについてはストレッチや筋トレと同等の効果があったことを報告しています2)。
※この報告の面白いのは、8週間のヨガ後の変化だけでなく、ヨガ終了後約3ヶ月後も同じ結果だったことです。
Ban, Mengkeらは、10件の論文を元にしたメタアナリシスという方法で効果を検討した結果、運動の状態、バランス機能、TUGという歩行のテスト(立ち上がって3m先のコーンを回って座るまでのタイムを計測)、QOL、不安や抑うつに対して効果があったことを報告しています3)。
これら二つの論文から、パーキンソン病患者さんに対する不安や抑うつ気分の軽減効果、運動機能の改善(維持)といったことが期待できるのではないかと考えます。
なぜ効果が出るのか?(私の推測)
ここからは、普段のリハビリテーション業務における私の経験と私見であることをご了承ください。
まずは運動面について。
パーキンソン病では、自分の体を意図的に力を抜いたり入れたりするのが苦手になり、力が入りっぱなしになるために動けなくなるという方が多いです。
ヨガでは呼吸を動きと連動せるため、息をはく時に自然と力が抜ける人が多いように感じます。
力を抜くことができると、次の動きへ繋がりやすくなるような気がしています。
また、不思議な点なのですが、大雑把に動きましょうというと動けない方でも、ミッションの自動車のようにどこの関節をどう動かすのかということを具体的に指示することでうまく動く方もいらっしゃいます(逆にそれで動けなくなる人もいますが…)。
ヨガでは、どの部位をどの方向へ動かすのかという具体的な言語指示を行いますので、相性が良いのかもしれません。
そして、ヨガは一度土台となる足場を決める、もしくはチェアヨガのように座って安定した土台で体を動かすので、不安定な土台や足を細かく動かすことが苦手なパーキンソン病の方にとって、精神的に安心して動けるのかもしれません。
最後にヨガは、ねじる・曲げるといったパーキンソン病の方が苦手になる動きが多いです。
そういった動きを病気の初期の段階から行うことで、体の動きが低下するのを予防する、または改善するのに役立つのかもしれません。
以上をまとめると、
・呼吸と動きを連動させることで力の脱力がうまくできる。
・自分の関節をどう動かすか細かい指示を得ることでイメージしやすい。
・安定した土台で安心して動け
・ねじる曲げるといった動きをする
こういった点が運動機能の改善につながるのかもしれません。
次に不安や抑うつの軽減効果について。
不安や抑うつの軽減効果については、過去のブログでパーキンソン病でない方を対象とした記事を作成しています。
詳細は以下の二つのリンクを参考にしてください。
パーキンソン病患者さんにとっての不安・抑うつの軽減効果について考えてみましょう。
私が思う一番のポイントは呼吸と考えます。
と言いますのも、パーキンソン病の患者さんは、息が浅く早い人、もしくは息をこらえがちな人が多いような印象があります。
呼吸が早くなると交感神経が優位となる可能性につながります。
ただでさえ、動きに対する不安感や抑うつ傾向で交感神経が昂っている人であれば、呼吸の状態により一層高まってしまいます。
ヨガはゆったりとした呼吸を律動的に行いますので、副交感神経を刺激し、不安感を沈めてくれるのかもしれません。
合わせて、これはある先生から聞いた話なので論文等詳細はわからないのですが、不安感や抑うつを抑えるのに一定のリズムで一定の大きさの運動をすることがポイントであると聞いたことがあります。
不安感と抑うつについて簡単にまとめると、ゆったりとした呼吸と同じリズムの動きを続けることがポイントであると考えます。
まとめ
今日は、ヨガのパーキンソン病に対する効果についてご紹介いたしました。
ポイントとしては、
・ヨガはパーキンソン病患者さんの運動面や精神面に効果がある可能性あり!
・ゆったりとした動きと呼吸を大切に!
の2点です。
実は、今自分の地域のパーキンソン病患者さん数名の方と月に一回ZOOMで座ってできるヨガをベースにした運動を指導させていただいております。
早く宣言が解除されて対面でクラスをしたいなーと思っております。
微力ではありますが、そのような方の力になれるのが嬉しいなと感じております(^^)
出典
1)https://www.nanbyou.or.jp/entry/169
2)Kwok, Jojo YY, et al. “Effects of mindfulness yoga vs stretching and resistance training exercises on anxiety and depression for people with Parkinson disease: a randomized clinical trial.” JAMA neurology 76.7 (2019): 755-763.
3)Ban, Mengke, et al. “The Effects of Yoga on Patients with Parkinson’s Disease: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.” Behavioural Neurology 2021 (2021).