ランニング

【脱水対策】ランナーは何をどう飲んだらいいのか考えてみる

この記事では、ランナーの脱水対策について何を考えたら良いのかということについてご紹介しています。

 

こんにちは、ヒロです。

 

暑い!口をひらけば暑いしか出ないです…

 

さてこんな暑い時期に考えたいのが、ランニング中の水分補給。

 

夏場はフルマラソンのレースはほとんどありませんが、ロング走や峠走などで長時間行動される人もいると思います。

また、トレイルランニングはどちらかというとシーズンになりますし、練習で山に入る人も多いと思います。

 

そんな中でできるだけ効率良く練習するためには水分補給も重要なポイントです。

 

そんな水分補給について、最近感じている水分補給のコツについて、少し気づいたことを共有させていただきたいと思います!

 

ちなみに私は普段理学療法士という仕事をしておりますので、体のことについては一般の方よりは少し詳しい方だと思います(多分…w)

 

 

水分の役割と必要な量について

 

この辺りは過去のブログで少し触れていますので、そちらも参考にしていただければと思います。

【ランナー向け】水分不足にご用心

 

大事な役割としては、体の体温調整、栄養素や酸素を体に運ぶことの2点です。

 

まず体温調整については、汗を出して表面で蒸発して気化することによって体温を下げています。

 

ですので、体温が上がるような運動負荷をかけているにもかかわらず、汗をかけていないと熱中症リスクがグッと上がります。

この汗の主成分は水分ですので、水分が不足すると汗が出なくなります。

 

次に栄養素や酸素を運ぶことについてですが、こういったものを全身に運搬するのは血液です。

血液の主成分は水分ですので、水分が不足すると循環血液量が減少し、運搬の効率が下がることが予測されます。

これはランニングのパフォーマンスにかなり影響しそうです。

 

必要な水分量としては、運動していなくても2,000mlくらいと言われていることが多いです。

ですので、日常的に汗を非常にかきやすい夏場に練習しているランナーとなると、これ以上を意識しておく必要があります。

(かくいう私不足しがち…)

 

水分が足りているかについて一つの目安としては、尿の色を参考にしましょう。

 

尿の色が濃ければ濃いほど脱水傾向となります。

常に薄黄色くらいになるようにしましょう。

 

 

水分は体の中でどうため込まれているのか?

 

さて大まかな役割を整理した後で、今度は水分が体の中でどうため込まれているか整理しておきましょう。

脱水のことを考える上では、この辺りを知っておくのも大切ですので、ちょっと言葉は難しいところもありますがお付き合い下さい。

 

まず、大きく分けて、水分は細胞外液細胞内液に大きく別れます。

 

細胞内液は読んで字の如く、細胞の中にある水分で、水分のうちのおよそ2/3を占めており、主に筋肉にためられます1)

細胞外液は細胞の外にある水分で、全水分量のおよそ1/3であり、組織間液と血漿(しょう)成分に分かれます1)

 

血漿は血液の構成要素であり、半分以上を占めているものです。血漿には、水・タンパク質・脂質・糖質・アミノ酸・ミネラルなど、ランニングにとって必要な成分が含まれています。

 

組織液とは、血管外にあって間質液とも言われ、むくみ(浮腫)はこの組織液が増えた状態を言います2)

 

細胞内液の主なイオンはカリウム(K)とリン酸イオンで、細胞外液はナトリウム(Na)、クロール(Cl)、重炭酸イオン(HCO3)となっています。

ちなみに、ランナーでお馴染みマグオンの成分であるマグネシウムイオン(Mg2+)は細胞内液に多く、細胞外液に少なくなっています。

(このイオン構造が大事!)

 

細胞内液と細胞外液
細胞内液と細胞外液

 

 

基本的には運動の負荷が上がり汗をかくと、細胞外液が減少していきます。ある一定のところまで細胞外液が少なくなると、細胞内液から細胞外液へ水分が移動して細胞外液を補います。

つまり、細胞内液は細胞外液のバックアップ役を担っているということです。

 

細胞内液はバックアップ役
細胞内液はバックアップ役

 

細胞外液が少ないと循環血液量が減少するため、細胞への酸素や栄養が運ばれにくくなり、逆に細胞外液が多すぎると、血液循環である心臓に過大な負担がかかってしまいますので、体は水の排泄を促すように働きます。

 

こういった特徴から、筋肉量が少ない人はため込めることができる水分量が少ないため、脱水になりやすいことも考えられます(実際、高齢者は細胞内液が少ないことが指摘されている1))。

そういった意味では、筋肉量を増やすことはある意味で脱水予防を兼ねているかもしれません。

 

 

細胞内液と細胞外液の出入り

 

ではどうやって細胞内外で水分が出入りしているのでしょうか?

 

ここで出てくるキーワードが『浸透圧』です

 

浸透圧とは、あのナメクジに塩をかけたら縮むあれです。

 

正確には、膜を通して、細胞内外の濃度を一定に保とうとする働きです。

 

浸透圧のイメージ図
浸透圧のイメージ図

 

例えば、細胞外液の浸透圧が上昇すると、細胞内から水が引き出されて細胞の水分(細胞内液)が減り、浸透圧が低下すると逆に細胞内に水分が入ります2)

 

ではその浸透圧の濃度を規定している物質は何か。

ここに関わるのが、ナトリウム(Na)です。つまりは塩。

 

先ほど細胞外液の方がナトリウムが多いということを述べました。この濃度が一定になるように体は水分量を調整しています。

 

塩分を摂取すると、ナトリウムの濃度が上昇しますので、細胞内液が引き出されて、細胞外液量は増えます。

 

塩分摂取時
塩分摂取時

 

逆に水をたくさん飲むなどしてナトリウムの濃度が薄まると、腎臓でナトリウムを再吸収しようとしたり、細胞内に水分を取り込んだり、尿で細胞外液の量を減らそうとしたりして、浸透圧を戻そうと反応します。

 

濃度が減少した時
濃度が減少した時

 

 

暑い時に走ることでランナーに何が起こるのか?

 

さぁ前置きが非常に長くなりましたが、ここからが本題となります。

暑熱環境で走る時に生じるランナーのリスクについて考えたいと思います。

 

この記事では大きく分けて脱水と、低ナトリウム血症の2点を挙げます。

 

脱水

 

暑い時には体温を下げるため、汗を出して体温を下げるよう体は反応します。

 

汗の中には水分とナトリウムが多く含まれます。

 

そのままいくと細胞外液の水分は少なくなっていきますし、ナトリウムが細胞外液から減少しますので、体内では細胞外液の濃度を一定にしようとして細胞内液からの体液移動も考えられます。

つまり、細胞内外ともに体液量が減少していくことが考えられます。この状態がひどくなると脱水症状を起こします。

 

脱水の主な症状としては、口の渇きや体のだるさ、立ちくらみや脱力、足攣りなどです。

 

体重の2%の水分が減少した場合にボーッとした感じを自覚したり、有酸素能力の低下を実感し、3〜5%の水分が減少するとその状態が顕著になると言われています3)

さらに暑熱環境下では、脱水になるとうまく体温が下げられないため、熱中症の重篤な症状に繋がりかねません(熱中症については今度まとめます)。

 

また、脱水は大きく分けて、高張性脱水等張性脱水低張性脱水の3種類があります。

 

この点については、以下のサイトが非常にわかりやすいため、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。

脱水の原因と検査・治療・ケアのポイント(ナース専科)

 

要は、水が塩分に比べて多く失われるか(高張性)水と塩分が同等に失われるか(等張性)塩分が水に比べて多く失われるか(低張性)という違いです。

 

ランナーを対象にそれぞれの状況を考えるとするならば、汗を短時間で大量にかく(高張性)、長時間行動により持続的にじんわり汗をかき続ける(等張性)、長時間行動中に塩分の少ない水分ばかりを摂取して塩分が相対的に少なくなる(低張性)といった感じだと想像してみてください(イメージなので間違っていたらごめんなさい💦)

 

それぞれの状況によって、何を優先的に補う必要があるのか変わりますので、補給の内容を考える必要が出てきます。

 

 

低ナトリウム血症

 

運動関連性低ナトリウム血症ともいわれるようです。

 

先ほどの低張性脱水がひどくなるとこの状態になります。(一時期水ダイエットで水中毒が問題になった時代がありましたが、それもこの減少です)。

 

水や市販のスポーツドリンクの飲み過ぎで、ナトリウム濃度が低下してしまうことが原因です。

 

症状としては、

 

 

頭痛

 

・手足のむくみ

 

・吐き気や嘔吐

 

・痙攣

 

・腹部膨満感(お腹のはり)

出典:スポーツ栄養学ハンドブック3)

 

などが生じます。

 

リスク因子として、女性、行動時間が4時間を超える、スピードが遅いランナーがリスクが高いという報告もあるようです4)。要は行動時間が長くなるケースと言えそうです。

 

国際マラソン医学協会医療救護マニュアルにおいては、以下のようにリスク要因を以下のように提言されています。

 

 

《ランナーに関連した要因》

・過度の水分摂取行動
・運動中の体重の増加(これには、レース開始時の体重あるいは「正常な」体重についての何らかの認識が必要)
・低体重
・女性
・スピードが遅いランナー
・経験が浅いランナー
・非ステロイド性抗炎症薬

 

《レースに関連した要因》
・水分補給のチャンスが多い
・4時間を超える運動時間
・異常に暑い環境条件
・極端な低温
・低体重
・女性
・スピードが遅いランナー
・経験が浅いランナー

 国際マラソン医学協会医療救護マニュアル5)

 

 

この辺りはトレイルランナーの方やウルトラランナーの方では心当たりのある方は多いのではないでしょうか?

 

私は鯖街道ウルトラマラソンの時に薄めのスポーツドリンクばかり飲んで、塩分摂取が少なめだったので、これだったのではないかとすごく感じています。ミスレースでした(泣)

 

脱水かと思いきや、実は低ナトリウム血症だったってことは大いにありそうです。

 

症状が生じた際の対処方法として、マニュアル内では、塩味のスナック食べたり、濃いめのコンソメスープ(125mlに対して3〜4個)を飲んだりすることと示されていました5)

 

コンソメやブイヨンのキューブ1個の塩分量は 約2.3gであることからかなりのナトリウムを体に入れることになります。結構な量ですよね。

 

コンソメスープをエイドで見つけたら速攻飲んでください!w

 

 

レース中での水分補給について考えてみる

 

それでは、ここまでを踏まえて、レース中での水分補給について私見ではございますが、整理してみたいと思います。

 

結論を先に述べますと、

 

個々によって体質が違いすぎるので、自分にあった方法を見つける!

 

の一言に尽きると思います。

 

「それがわからんから困ってるんや」と、お叱りを受けそうなので、考える上でのポイントをご提案させていただきます。

 

ポイントとしては、その日の気温、暑熱馴化の度合い、レースの序盤なのか中盤〜終盤なのかで分けて考えることだと考えます。

 

ここでは30度近くになるような暑い日のレースで考えてみたいと思います。

 

汗のかき方は暑熱馴化の度合いによって異なります。

 

ある報告によると、暑熱環境に対して馴化することで、汗腺が肥大して汗が30%増加、汗に含まれる塩分量が60%程度減少すると言われていますので3)、個人の暑熱馴化の状態によりかなり差が生じることが考えられます。

 

もしうまく暑熱馴化していれば、水分が多く出るということになりますので、スタートからレース序盤は塩分濃度薄めのものが良いと思われます。(どこまでをレース序盤と考えるかは、かなり個人差があると思います。感覚的にはスタートから2時間くらいでしょうか)

 

ただ、暑熱馴化がうまくできていない状態では、塩分もしっかり出ていきますので塩分の摂取も序盤から必要になってくると考えます。

 

大事なことは、レース序盤から自分の体にとって濃すぎる濃度の塩分を摂取してしまうと、細胞内液が細胞外液の濃度を一定にしようとして、細胞内に蓄えた水分を出してしまう可能性があるため注意が必要です。

 

そして、中盤から終盤に向けて行動時間が長くなってくると、いくら暑熱馴化がうまくいっているとはいえ、塩分は出続けているわけですから、水分ばかりとっていると低張性脱水→低ナトリウム血症のリスクが上がります。このタイミングでは水分の塩分濃度を少しずつ上げていく必要があると考えます。

 

塩分タブレットなどでガツンと塩分を摂取もアリだと思いますが、ここでも注意が必要な点があります。

 

何度もレースやマラソンに出て今更気づいたことなのですが、塩分と書いていても、その中のナトリウム含有量が商品によってかなり異なります。

 

例えば、口から固形物として摂取する塩熱サプリと2RUNを比較してみましょう。

 

塩熱サプリ(6粒7.5gあたり) 2RUN(2粒)
食塩相当量:0.6g 食塩相当量:0.21g

 

パッと成分表を見たときは塩熱サプリの方が多そうですが、単位あたりの量が異なります。

 

塩熱サプリを1個食べただけでは、塩分は0.1gしか摂取できません。

(※あくまでも塩分だけの話なので、他のミネラル摂取も考えてどちらがいいのかは考える必要があります。)

 

ですので、自分はどのくらいの塩分を摂取して、どんな体の状態だったかを後で振り返ることで、後々のレースで自分の必要な塩分量が見えてくると思われます。

(私はまだ完全ではありませんが、何となく見えてきました)

 

また、固形物のタイプのちょっとした問題点としては、濃度の濃いものだとガツンと塩分が上がってしまうので、一時的に浸透圧が高くなってしまうことです(濃度を薄めようと細胞内液が移動してしまうかもしれず、細胞が水分不足になるかも)。

 

自分の体の水分がどうなのかによって使用すべきかどうかを判断することを考えています。

 

自分の場合の判断材料としては、おしっこの色、汗の出具合です。

 

少なくとも、尿が濃くて汗が出ない時は間違いなく水分が足りていないので、水分をしっかり摂りますし、レースの中盤から後半にそうなっているのであれば、高濃度の塩分も定期的に摂取するように意識します。

 

ただ、こうなったらこのくらいというのはまだ模索中なので、もし何か情報があれば教えていただきたいくらいです!

 

こんなことを考え始めると、ミドルレース(40kmくらい)以上のトレイルランやウルトラマラソンで、レース序盤から終盤まで塩分を考えながら水分を調整するのは、エイドの水分だけではかなり難しいです。ですので、補給の固形物やジェルなどで工夫する必要があります。

 

その中で、最近は経口補水パウダーを愛用しています。

 

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これは、1包あたり0.88gの塩分量であり割と塩分量が多く、パウダーなので携行しても軽いです。エイドで水分さえあれば500mlに対して1本か2本溶くか自分の状態を考えて調整できるので、かなり良いなと感じています。

 

あとは、お財布に優しいw。50本入って3000円くらいなので、1本あたり60円で、経口補水液を買うより似たような成分のものを安く作ることができます。夏場の練習やレースで役立ちます。

 

ウルトラミネラルタブレットもオススメです。

 

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タブレットタイプで水に溶かすものですが、2粒あたりで塩分は1.65mgと2RUNや塩熱サプリよりも豊富に塩分が含まれています。

これも入れる個数で調整は可能です。また微炭酸なので私個人としては少しリフレッシュ感を味わえます。

直に食べることもできますが、発泡するのでかなり強烈です(笑)

 

ただ、水に溶かすタイプの注意点としては、全て飲み干して、表示された塩分摂取となりますので、固形で食べるものと比べると即効性はありません。

 

低ナトリウム血症や低張性脱水が考えられる時であれば固形物や、エイドにある塩分高めの固形物摂取で対応することが必要です。

 

まとめ

 

今回は脱水についてご紹介いたしました。

 

ポイントとしては、

 

 

 

・水分は細胞内液と細胞外液がある

 

・二つの水分は浸透圧によって移動する

 

・浸透圧はナトリウム(塩分)によって規定される

 

・脱水は高張性、等張性、低張性脱水の3種類がある

 

・長時間行動のランナーは低張性脱水から低ナトリウム血症のリスクがある

 

・水分摂取時の塩分量が非常に重要となる

 

・塩分量はレースの序盤か、中盤から終盤かによって濃度を変える必要がありそう

 

・補給するものによって含有されている塩分量に差があるので内容量を注意しておく

 

以上となります。

 

どちらかといえば、長時間行動する人向けの内容となりましたが、フルマラソンにおいても考えることは共通すると思います。

 

暑い時期のランニングの参考になれば幸いです!また、トレイルやウルトラマラソンなどの長時間行動にも参考になればと思います!

 

出典

1)谷口英喜. 総論 栄養管理における体液状態の評価. 日本静脈経腸栄養学会雑誌, 2017, 32.3: 1126-1130.

2)貴邑冨久子/根来英雄(2003).シンプル生理学 改定第4版,南江堂

3)ダン・ベナードット(2021).スポーツ栄養学ハンドブック 東京大学出版会

4)ALMOND, Christopher SD, et al. Hyponatremia among runners in the Boston Marathon. New England Journal of Medicine, 2005, 352.15: 1550-1556.

5)永田高志, et al. 国際マラソン医学協会医療救護マニュアル. 公益社団法人日本医師会, 東京, 2016.