ランナーのふくらはぎ
ランニング

【ランナー向け】ふくらはぎの怪我を予防するにはどうしたら良いのか

この記事ではランナーのふくらはぎのケガ予防はどうしたら良いのかという点についてご紹介しています。

 

こんにちは、ヒロです。

 

2022年1発目の記事は、ランナーのふくらはぎのケガ予防についてです。

 

コロナウイルスの流行により、なんとも言えない状況ではありますが、マラソンのシーズンとなっており、大会の開催を期待して練習に励んでいる方が多いのではないでしょうか。

 

そんな中で絶対に避けたいのがケガです。

 

積み重ねてきたものが台無しになってしまうため、ケガなく練習を積み大会でベストを尽くしたいところです。

 

そんなランナーのケガの中で多いと思われるのが、ふくらはぎ(かかとを含む)のトラブル。

 

肉離れや痛みなどで練習ができないと言う人をよく聞きますし、SNS上でもよく見かけます。

 

そこで、ふくらはぎのケガを予防するにはどうしたら良いのか考えていきたいと思います。

※トップアスリートというより私のような市民ランナー向けの内容です。

 

 

先に結論としては、

 

・まだ明確なエビデンスは出ていなさそう

 

・自分の状態を振り返り、自分にあった練習やケア、食事などを考える

 

 

この2点が大まかな結論です。

 

この点について、理学療法士であり、一市民ランナーの視点で論文情報や考えをご紹介いたします。

 

ちなみに私はランニング歴は約7年ですが、最初の3年はほとんど練習しておらず、真面目に走り始めたのは2017年からです。今まで医療や整体にかかるようなケガはなく練習を継続できており、その間、100kmのウルトラマラソンや40km程度のトレイルランニングを完走しています。フルはコロナで大会がなくなってしまったので、最後に出たのは3年前くらいで3時間41分です。

最近の走力は、セルフのハーフマラソンで1時間35分くらいです。

 

というわけで、一般の平凡な市民ランナーなレベルですね。

 

ふくらはぎには何がある?

 

まず構造の問題を整理しておきましょう。

 

ふくらはぎにある筋肉としては、以下のような筋肉で構成されています。

 

後脛骨筋など

 

これらの筋肉の役割としては、着地の時の衝撃吸収や蹴り出しの時のパワーを出すなどに関わります。

ふくらはぎの痛みというのはこれらの筋肉のダメージが影響しています。

 

 

筋肉の中でも腓腹筋とヒラメ筋は下腿三頭筋と呼ばれ、アキレス腱にくっついて大きな力を発揮する筋肉となります。アキレス腱はランナーが炎症をよく起こす組織ですね。

腱組織は筋肉に比べて血流が乏しい組織ですので、一旦痛めたりダメージを負ってしまうと回復に時間がかかるため厄介な組織だと考えます。

 

 

また、著作権の問題上、画像をここに貼り付けるわけにはいきませんが、アキレス腱と踵の骨の間にはKager fat padと呼ばれる脂肪体が存在しています。(※脂肪体の概要についてはフリーの論文がありますので、こちらでご確認ください。)

この組織には、血管や神経がありますので、何らかの刺激で炎症が起こると痛みが生じる可能性があります。ふくらはぎの末端という点ではこれも影響する因子の一つと考えられます。

 

ふくらはぎのケガの原因や予防は?(文献情報より)

 

それでは、世界的にはどのようなことが検討されているか見ていきましょう。

 

まず、ほとんどの論文で共通して述べられていることとしては、『結論を出すには研究の質をもっと上げる必要がある』という点です。

データを集めたり、どこからがランニングによるケガとするかなど曖昧な部分がまだまだ多いようです。

 

その点を踏まえて、今可能性がある点について3つの論文をご紹介します。

 

 

VAN MIDDELKOOPらはオランダのプロではないアマチュアランナーを対象としてアンケート(694人)調査をしています。その結果、まずケガをする要因として、脚のどこかを怪我した事があるという人で、ケガのリスクを下げる要因として、高い教育レベルの人、週40km以上のトレーニングをしている人、陸上競技協会への加入の3つが上がっています1)

 

これは何となく理解できますよね。

どこかケガをしている人はかばいながら走ったり、傷が完治しないまま走っているとケガのリスクは上がりそうです。また、ケガをした事で気づかずにフォームが変化してしまっているケースもありそうですね。

 

逆に、トレーニングをきっちりと行っていれば(陸上競技会への加入は練習意識が高い人が多そう)、ふくらはぎも強化されるためリスクは下がりそうと解釈します。

 

教育水準については、今からどうしようもない点ですが、これについては、「自分の頭で考える事」と私は解釈します。情報が溢れている時代ですから、自分の体にあったトレーニングなのか、自分にとって必要なことは何なのかということを自分の頭や体で考える事が予防に最も大切なことと私は考えます。

 

2つ目の論文にまいりましょう。

 

JUNGMALMらは、スウェーデンの市民ランナー(週平均25kmくらい走る人)の448本の脚を対象に様々な検査や解析を行った結果、股関節の外転筋が弱いランナー、後足部の外反のタイミングが遅いランナーがランニング障害のリスクが上がると報告しています(これはふくらはぎとは限定していません)2)

 

股関節の外転は、片足で立っている間のバランスの安定に関わる筋肉ですので、ここが弱いと不安定で他の部位に負担がかかる可能性は考えられます。

 

後足部の外反とは、かかとの内側が下がって外側が上がる動きです。本来は、着地した瞬間に衝撃を吸収するために外反方向への動きが生じます(回内とも言います)。このタイミングが遅れたり、無かったりすると脚全体に衝撃が強く伝わりますので、筋肉への負担も強くなりそうな感じです。

 

こういった点から、筋力や足の使い方も非常に大切なポイントなのかもしれません。

 

3つ目の論文です。

 

LAGAS, Iris F.らは、オランダのランナーを対象にしてアキレス腱をケガするリスクについて調査したアンケート調査を実施しています。その結果、過去12ヶ月間で同部位をケガした事があるか、トレーニングスケジュールを組むこと、スポーツ圧縮ソックスの使用が要因として挙がりました3)

 

トレーニングスケジュールやコンプレッションウェアって良いのかなという印象でしたが、逆の結果で驚きました。

 

私個人の意見としては、スケジュールを組む事が悪いとは思いませんが、自分の体の変化を無視して柔軟にスケジュールを変更できず、スケジュールを遂行しようと頑張りすぎるのがケガに繋がるのかなと思います。

 

コンプレッションウェアについては本当に自分に合うかどうかが重要です。靴下も同様で、変に足をサポートされると、かえって違和感を感じた経験もあります。ですので、世間でこれが良いという評判があっても、必ずしも自分に合うかどうかはわからないので、最後は自分の感覚を信じる事が重要と考えます。

 

他にも、着地のパターンや、走る量・強度を比較した研究もありましたが、特にケガに差があるわけではなさそうでした。

 

ここで注意していただきたいのが、どの研究でも質についての限界があり、結果をすぐに一般化できるとは言えないといった旨を述べられています。

 

ですので、ふくらはぎのケガにこれが良い・悪いという結論を出すにはまだまだこれからのような印象を受けました。

 

ただ、多くの報告の中で過去のケガの経験は共通していそうなので、その点に該当している方は注意した方が良いと考えます。

 

ふくらはぎのケガには関わる要因がかなりありそう

 

ここまで、論文の情報を確認してみました。

今のところ、これといった確定要素があるわけではなさそうな様子です。

 

そこで、ここからは個人的な考えについて述べたいと思います。

 

ふくらはぎのケガに関しては、かなり多くの要因が関わり、それが単独ではなく複数の要因が絡む形で生じているのが実際ではないかと感じます。

 

ランニングフォーム、ランニング負荷(心拍数とペース)、靴のフィッティング、着用するウェア、練習の内容と量、水分や栄養摂取状況(行動時も含む)、レーススケージュール、体の使い方、路面状況、気象条件、ケアの手段や部位などなど。

 

論文などで参加者の条件を統制して研究するにはかなりの限界があるのではないかと感じます。

 

ですので、ケガを予防するために最も重要な点は、総合的に自分の状態を判断して修正していく能力だと考えます。

 

その結果、順調に走る量やトレーニング負荷が勝手に上がっていくものなのかなと感じます。

 

つまり、自分の身体の声を常に気にかけて、休むこと、食べること、走ることのバランスを取る事が重要と考えます。

 

情報過多な社会の中で、「これが効く!!」といった即効性のある謳い文句に魅了され、考えなしにそればかりをするのは注意しましょう(自戒を込めて)。

逆に、これは効かないと言われるようなものでも、自分には効く場合もあり得るので、まずはフラットに情報を捉えるのも大切ですね。

 

これらの点については、また今後テーマとして取り上げたいと思います。

 

まとめ

今日は、ランナーに多いふくらはぎのケガについて論文情報と個人的な考えについてご紹介いたしました。

 

ポイントとしては、

 

 

・過去にケガをした事がある人はケガするリスクが上がりそう

 

・明確なケガの原因については、まだ確定はしていなさそう

 

・様々な条件が複雑に絡んでケガにつながる

 

・最も大切なのは総合的に自分の状態を判断して何が必要か考える力(個人の考え)

 

以上がポイントと考えます。

 

健康のために始める方も多いと思います。

 

ケガを最小限に抑えて、楽しくランニングライフを過ごしたいですよね。

 

そのために、まずは自分の身体や生活の現在の状況を考える習慣から始めてみていただけると幸いです(^^)

 

出典

1)VAN MIDDELKOOP, Marienke, et al. Risk factors for lower extremity injuries among male marathon runners. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 2008, 18.6: 691-697.

2)JUNGMALM, Jonatan, et al. Associations between biomechanical and clinical/anthropometrical factors and running-related injuries among recreational runners: a 52-week prospective cohort study. Injury epidemiology, 2020, 7.1: 1-9.

3)LAGAS, Iris F., et al. Incidence of Achilles tendinopathy and associated risk factors in recreational runners: a large prospective cohort study. Journal of science and medicine in sport, 2020, 23.5: 448-452.