バランスをとってヨガをしている人
ヨガ

【効果検証】ヨガでバランスは改善するのか?

本記事では、ヨガでバランスが改善するかという点について言及しています。

 

こんにちは、ヒロです。

今日は、久しぶりに福知山にある烏ヶ岳に登ってきました。

新緑の緑生茂る季節は、リフレッシュに持ってこいです。

 

さて、そんな今日のテーマは

ヨガでバランスは良くなるのか?

 

この記事内で使うバランスとは、立っている時や走っている時などに倒れそうになったら姿勢を戻す力のことです。

 

走る人(特にトレイルランナー)にとっては、安定した姿勢を保って走るのは大切なことですし、高齢者の方にとっては、転倒を予防するために必要な能力になります。

 

このバランスの改善にヨガは効果があるのかという点についてご紹介いたします。

 

先に結論としては、

・スポーツ選手のバランス改善に効果があるかは不明

 

・高齢者やアスリートではない方には効果がありそう

 

・自分の実感としては、効果を感じる

 

ということで、以下に詳細を述べていこうと思います。

 

バランスについて

 

まずバランスについて整理しておきましょう。

 

バランスが崩れるとは、簡単に言うと支持面から重心が外れて姿勢を保持できないことです。

 

どこが簡単や!と聞こえてきそうですね。

 

下に図示します。

支持面と重心の関係性(安定と不安定)
支持面と重心

 

 

こんな感じです。支持面とは杖を使わない人であれば、足で囲まれた範囲のことを意味します。

 

ここから重心が外れることでバランスが崩れます。

 

バランスが崩れると、支持面の中に重心を戻そうとして体が反応します。

重心がズレると元に戻ろうとする
重心が支持面内でずれた時

そして戻そうとしても戻らない時は足を出したりして支持面を拡げます。

歩行の時の重心
支持面から重心が外れた時

ちなみに不安定は決して悪者とは限りません。

例えば、私たちが日々行っている歩行。

歩く時は、支持面から重心が外れることで、前に進みます。ただ、そのまま何もしなければ転倒しますので、足を一歩だして、重心をまた支持面の中に納めます。この繰り返しが歩行となります。安定し続けている場合はその場から動けませんからね。

 

この支持面は、何かに触れている時は、そこも支持面になるため安定性が広がります。

杖の役割がそうですし、トレイルであれば木々を持つことで一時的に支持面が拡大しバランスをとりやすくなります。

ヨガであれば、手をつく系のアーサナも支持面が大きくなることを意味します。

四つ這いの支持面の大きさを表す
四つばいの時の支持面

 

つまり、バランスを安定させるということは、支持面の中にうまく重心を収めることです。

 

バランスに関わるものは?

 

それでは、どこでバランスをとっているのでしょうか?

 

もちろん筋肉関節が大きな役割を果たします。

 

小さな揺れは足くび周り、少し大きな揺れは股関節周り、さらに大きな揺れになると体幹や手を使ってバランスをとる必要があります。この関節周りの筋肉がバランスに関わります。

 

そして、これらの筋肉に指令を出しているものが神経です。

 

神経は筋肉から脊髄を経て脳に達します。この経路内の全てがバランスに関わります。

さらに脳は賢いもので、バランスが崩れそうな場面などで、動きに先行して筋肉に指令を出す(フィードフォワード)という働きもしています。

 

ちなみに、脳にはバランスを制御するために、眼・平衡感覚・足裏などから入ってくる感覚情報も伝達されています。このそれぞれの器官からの情報も非常に大切な要素とります。

感覚器官
体の感覚器

 

例えば、眼を開けた時と閉じた時の片脚立ちのバランスを確認してみてください。

眼を閉じてふらつくということは、それだけ眼の情報を頼りにバランスをとっているということになります。

 

こういった組織が働くことでバランスをとる反応が生まれます。

 

単純に見えるバランスの能力ってかなり複雑なのです。

 

バランスが改善するとはどういう状態?

 

先にバランスが改善することについて整理しておきましょう。

 

基本的には、支持面の中に重心を収めることができる能力が改善することです。

 

そのために必要な要素としては、

 

必要な要素

・重心をうまくコントロールできること

 

・筋肉や神経の働きが良くなること

 

・不安定になった時に反応できる体であること

 

・狭い支持面でもバランスを取れること

 

・バランスをとる際の脳や筋肉の働きが最小限で済むようになること

 

・平衡感覚や体からの感覚入力を扱うことがうまくなる(敏感になる)

 

などが挙げられます。

各項目について説明するとキリがないため、ヨガにおいてポイントになる重心をうまくコントロールできることについて焦点を絞って補足いたします。

 

重心をうまく扱うためには、支持面から重心が外れないようにする必要があります。

 

重心とは、手や頭・胴体などの各パーツの空間上の位置によって規定されるため、それぞれのパーツをいかにうまく動かせるかがキーポイントとなります。イメージは積み石ですね。

積み石
絶妙なバランスの積み石

 

例えば、ナタラジャアーサナだと↓の感じです。

 

重心が規定面に収まるようにバランスをとる
アーサナの時の支持面と重心

 

そのための大前提としては、自分の意識通りに動く関節であることが重要です。

 

自分の意識通りに動かすためには、筋肉の柔軟性であったり、その関節にを動かすことに対するイメージが出来ていることが必要となります。

 

そういった要素の改善よる結果の一例としては、

 

バランスが改善すると…

・片脚立ちがうまくなる

 

・転倒しにくくなる

 

・不安定な状況でも体を安定して保つことができる

 

・不安定な状況でも、筋肉のムダな力が入らず動かすことができる

 

といった変化が生じます。

 

 

ヨガでバランスは改善するのか?

 

それでは、本題。

ヨガでバランスが改善するのかという点について、いくつかの報告を紹介いたします。

 

KELLEY, Kathleen K.らは、70歳前後の高齢者を対象に12週間のヨガを実施したところ、歩行速度や、転倒に関するバランスを評価する指標で改善が見られたと報告しています(変化の量は少なそうですが…)1)

 

JORRAKATE, Chaiyongらは、タイの肥満体型で片脚立ちのバランスが悪い16名を対象に4週間のヨガを実施した結果、片脚立ちのバランスが改善し、ヨガをしていなかった人たちよりも上達したことを報告しています2)。

 

SUBRAMANIAM, Savithaは、健康な成人男性20名を対象に、ヨガをしている人としていない人でバランス能力に差があるかを調査したところ、ヨガをしている人の方がデュアルタスク時のバランス能力が高かったことを報告しています3)。

※デュアルタスク:計算しながらバランスをとるといった、2つのことを同時に進める能力

 

YOUKHANA, Sabrina,らは、参加者の平均年齢が60歳以上の6つの論文をもとにしたメタアナリスと言われる方法での報告で、小さいがバランスに効果があると結論づけています4)。

 

このようにバランスの改善に関する報告はいくつかあるようです。

 

ちなみに、自分自身興味のあったランナーなどのアスリートを対象にしたバランス関連のものは見つけられませんでしたが、不安感の抑制などバランス以外には効果ありそうでしたので、またいつか整理したいと思います。

 

なぜヨガでバランスが改善する?

 

なぜヨガでバランスの改善が生じるのでしょうか?

 

いくつか理由を考えてみました。

 

まずは柔軟性

ヨガは、アーサナを通して体の柔軟性が改善し、各関節が動く範囲が大きくなることで、意図した動きを作りやすくなる可能性があります。

また、肋骨周辺や肩甲骨周り、骨盤周りなど動きが小さくなりやすい場所の動きが改善することで、重心を制御する上でより細かな対応ができる可能性が上がります。

 

そして、筋力

ヨガでは体幹を中心とした、体の土台となる部位の筋力がupする可能性があります。

この体幹がどっしり安定することで、腕や脚がバランスに関わる割合が減り、自由に動かすことへとつながる可能性が生じます。だから、ヨガには体幹などの土台となる場所の筋力が特に重要なポイントなのです。

 

あとは、感覚

ヨガは、足裏のどこに力を入れるか、など各関節の力の入れ方について細かく意識をして行います。

こうすることで、普段意識しない部分への感覚を認識するようになり、体を扱うイメージがうまくなる可能性があります。

私としては、この要素が結構大きいのではないかと感じています!

 

 

最後に、慣れ

単純な考えであれば、支持面の狭い片脚立ちのアーサナや手で体重を支えるアーサナなどを反復して練習することで、バランスをとることがうまくなるのでしょう。検証しているわけではないので私見ではありますが、自転車と同じで、反復することで脳や神経において学習が進み、余分な力が抜けてバランスをうまく保てるようになるのも要因と考えます。

 

 

バランスに関する自分の実感

 

それでは、自分がこれまでヨガをしてきた実感を述べたいと思います。

 

特に集中してアーサナに取り組んでいた時期では、日に日に、バランスを求められるようなアーサナが上達していった感覚がありました。

 

この時期の上達の理由について自分なりに考えてみました。、

 

まずは、先ほど説明したように、体の各筋肉の柔軟性が増したことで、動く範囲が大きくなりました。そのため、不安定なアーサナの際に、自分の体の各パーツを支持面の中に納めるための細かな動きを調整しやすくなりました。

この効果、ヨガ以外ではトレイルランの下りなどふらついた時の対応がしやすくなった感じがあります。

 

また、普通のストレッチと違って、筋力を鍛える要素も含まれるため、ただ柔軟をしていた時より、動く時のどっしり感が良くなった気がしています。特に体幹がどっしりと安定することで、手足の無駄な力が抜けて扱える可動範囲が増えたなと感じていました。

 

そして、足裏の体重をかける位置に関する意識や、ここに力を入れれば力が安定しやすいなど体に対する気づきが増えたと思います。安定しやすいポジションや力の入れ方を学ぶことで、アーサナ中の安定感もしっかりとして、手足を扱いやすくなった気がしました。

 

もちろん、ヨガ以外にランニングや自転車、トレイルランなどをしているため、一概にヨガ単独の効果とは言えませんが、うまく相互作用を起こしているような感覚ではあります。

 

まとめ

今日は、ヨガがバランスを改善する可能性があることをご紹介いたしました。

 

今日の話の要点としては、

Point・バランスには色々な要素が関連している。

 

・ヨガは特に高齢者や運動習慣の少ない人に対してバランス改善の可能性を秘めている

 

・ヨガにより、バランスを構成する色々な要素を刺激することができるかも

 

といったところです。

 

バランスを鍛えることは、転倒予防やケガをしないことなど、生きていく上で結構大事な点になります。

機会があればヨガでバランスを刺激してみてくださいね(^^)

 

 

 

出典

1)KELLEY, Kathleen K., et al. The effects of a therapeutic yoga program on postural control, mobility, and gait speed in community-dwelling older adults. The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2014, 20.12: 949-954.

2)JORRAKATE, Chaiyong, et al. Effect of yoga training on one leg standing and functional reach tests in obese individuals with poor postural control. Journal of physical therapy science, 2015, 27.1: 59-62.

3)SUBRAMANIAM, Savitha; BHATT, Tanvi. Effect of Yoga practice on reducing cognitive-motor interference for improving dynamic balance control in healthy adults. Complementary therapies in medicine, 2017, 30: 30-35.

4)YOUKHANA, Sabrina, et al. Yoga-based exercise improves balance and mobility in people aged 60 and over: a systematic review and meta-analysis. Age and ageing, 2016, 45.1: 21-29.